May 5, 2016

FOIL Method

日本の中学数学3で学習するbinomial(2項式)同士の積を展開するには次のように計算します.$$(a+b)(c+d)=ac+ad+bc+bd$$この計算は,まずFirst terms同士を掛け(ac), 次にOuter(ad), Inner(bc), Last(bd)と計算するので,これらの頭文字をとってFOIL methodといいます.このような覚えやすい方法をmnemonicといい,このように頭文字をとって新たな単語のように読む用語はacronym(頭字語)といいます.右の計算の続きはこうなります.
\begin{align}
(2x+3)(4x-5)&=2x\cdot4x+2x\cdot(-5)+3\cdot4x+3\cdot(-5)\\
&=8x^2-10x+12x-15\\
&=8x^2+2x-15\\
\end{align}
この方法は他にも面白い言い方があって,crab claw method ともいいます.直訳すると「カニの爪」ですが,図のように掛けるもの同士を結ぶとカニの爪に見えるというところからこう呼ばれています.

日本ではこの計算方法に特別な名前はありません.

この応用として,binomial theorem(二項定理),trinomial theorem(三項定理),multinomial theorem(多項定理)があります.

二項定理
\begin{align}
(a+b)^2&=a^2+2ab+b^2\\
(a+b)^3&=a^3+3a^2b+3ab^2+b^3\\
(a+b)^n&=a^n+\binom{n}{1}a^{n-1}b+\cdot\cdot\cdot+\binom{n}{n-1}ab^{n-1}+b^n\\
&=\sum_{k=0}^{n}\binom{n}{k}a^{n-k}b^k\\
\end{align}

ここで各項のcoefficient(係数)は,$$\binom{n}{k}=\frac{n!}{k!(n-k)!}$$で得られ,これらを並べるとPascal's triangle(パスカルの三角形)ができます.

三項定理 (日本の高校教科書ではこれを多項定理と呼んでいます)
\begin{align}
(a+b+c)^2&=a^2+b^2+c^2+2ab+2bc+2ca\\
(a+b+c)^3&=a^3+b^3+c^3+3a^2b+3a^2c+3b^2a+3b^2c+3c^2a+3c^2b+6abc\\
(a+b+c)^n&=\sum_{\substack{i+j+k=n}}\binom{n}{i,j,k}a^ib^jc^k\\
\end{align}ここで各項の係数は,$$\binom{n}{i,j,k}=\frac{n!}{i!j!k!}=(i,j,k)!$$で得られ,これらを並べるとPascal's tetrahedron(パスカルの正四面体)またはPascal's pyramid(パスカルのピラミッド)ができます.

多項定理
\begin{align}
(a_1+a_2+\cdot\cdot\cdot+a_m)^n&=\sum_{k_1+k_2+\cdot\cdot\cdot+k_m=n}\binom{n}{k_1,k_2,\cdot\cdot\cdot,k_m}\prod_{1\leq t\leq m}a_t^{k_t}\\
\end{align}ここで各項の係数は,$$\binom{n}{k_1,k_2,\cdot\cdot\cdot,k_m}=\frac{n!}{k_1!\cdot k_2!\cdot\cdot\cdot k_m!}=(k_1,k_2,\cdot\cdot\cdot, k_m)!$$で得られ,これらを並べるとPascal's simplex(パスカルの単体)ができます.このsimplex単体)とは,0次元の点,1次元の線分,2次元の三角形,3次元の四面体をn次元に一般化したものです.

因みに,このfoilという単語はもともとあって,金属の薄片,箔を意味します.あまりご縁はありませんが,ネイルアートでは爪にnail foilという薄片を貼りつけて装飾します.台所用品のアルミホイル(アルミ箔)は,実はaluminium foilなので,アルミフォイルと呼ぶべきところです.似たような言葉でアルミホイールといえば車に装備するaluminium wheelになります.

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